メリットとデメリット
今回はeラーニングのメリットを解説していきます。例えば、集合研修の一部をeラーニングにすることによってどのような利点があるのかをみていきます。
1.時間や場所の制約がなくなる
eラーニングでは、全員が同じ時間、同じ場所にいる必要がなくなります。その結果、研修施設へ移動したり、宿泊するコストを削減できます。PCなどを利用できる環境であれば受講が可能であるため、一度に多くの方に、それぞれのペースで受講してもらえるようになります。
2.自分のペースで学習ができる
また、同じ内容をもう一度見直すこともできるので、自分の理解のペースにあわせて学習ができるようになります。管理者側は、どの程度理解したか、どの程度資料を読み進めたのかをチェックできるようになります。
3.学習の履歴をとることができる
eラーニングと、ネットを利用して受講者にファイルを送信することとの決定的な違いは、eラーニングでは誰が、どの程度進捗し、どのような成績であるかといった学習履歴を残すことができるという部分です。したがって、テキスト教材と確認問題や試験問題を設定することによって、受講者の理解度をチェックすることができます。
4.資料配送の手間がかからない
学習内容はネットを通じて配信されますから、これまでのように資料を郵送したりする手間や切手代・DVD代などの材料費はかからないことになります。
(もっとも、初期に導入費用がかかりますが、資料の郵送・切手代とその手間を考えると、郵送する人数が多ければ多いほど効率が上がることになります)
5.研修のコストを下げることができる
ここまでにも説明してきましたが、集合研修の際の講師代・場所代、参加者の交通費・宿泊費、またそれぞれにかかる時間・経費を大幅に節約することができます。集合研修を実際に行う際にも、eラーニングと組み合わせる方法が用いられています。eラーニングで受講者にあらかじめ知識を定着させておくことで、受講者のレベルを均一にし、理解や定着度を上げる一方、研修にかかる時間を減らすことができるという、いわゆる「ブレンディッド・ラーニング型」の研修です。
eラーニングと集合研修のコストを比較した試算をご紹介します。この表では、完全にeラーニングにした場合ですが、集合研修を完全になくすのではなく、eラーニングを導入することで集合研修が効率化し、研修に必要な日数を削減することが可能となります。
集合研修を行った場合と、eラーニングを行った場合の費用比較
2,000名に対して1泊2日の研修を行ったとします。
集合研修では、1日目午前、午後と講師を招いて講義を行い、2日目には試験・採点・講評を行うというスケジュールだとすると次のような費用が発生します。
集合研修(1泊2日) | eラーニング | |
---|---|---|
受講者数(人) | 2,000 | 2,000 |
延べ人数 | 4000人日 (50人クラスx40回+ 欠席者フォローx4回) | |
研修回数(回) | 44 | |
実教育研修日数(日) | 88 |
こうした場合にかかる費用は以下のように試算しました。
集合研修 | eラーニング | ||||
---|---|---|---|---|---|
合計金額(円) | 積算根拠 | 合計金額(円) | 積算根拠 | ||
宿泊費 | 14,000,000 | ひとり1泊@7,000 | 0 | 不要 | |
食費 | 14,000,000 | ひとり4食@7,000 | 0 | 不要 | |
会場費 | 13,200,000 | 講義室 1日@150,000 x2日x44回 | 0 | 不要 | |
教材・資料・試験作成代 | 6,000,000 | ひとり@3,000 | 2,000,000 | eラーニング教材化外注 (※内容により変わります) |
|
試験料 (採点・成績集計) | 10,000,000 | ひとり@5,000 | 0 | ※LMS標準機能 | |
講師謝礼 | 13,200,000 | 1回@300,000x44回 | 300,000 | 1回@300,000 | |
交通費(受講者) | 2,000,000 | ひとり往復@1,000 | 0 | 不要 | |
小計 | 74,400,000 | 4,347,500 | |||
受講者移動時間人件費 | 12,000,000 | @3,000/hx2h | 0 | 不要 | |
欠席者フォローなど 事務局人件費 | 132,000 | @3,000/hx1hx回数 | 0 | ※LMS標準機能 | |
総合計 | 86,532,000 | 4,347,500 | |||
合理化金額 | 82,184,500 |
これはあくまで参考ですが、およそ8000万ものコスト削減が可能となります。集合研修とeラーニングを同時に行い、集合研修の時間を短縮した場合にも、基本的には同じようにコストを抑えることができると考えられます。
もちろん、eラーニングを行った際のデメリットも存在します。
ここからはデメリットについて解説していきます。
1.臨場感と強制力のなさ
eラーニングにすることのデメリットは、即座にその場で学習してもらう強制力を持たないこと、臨場感のなさなどが挙げられます。
その結果、eラーニングを導入してもなかなか受講してもらえないといった問題が起こりえます。
学習期間を決めて、メールなどで「学習が遅れています」といった通知をすることはできますが、実際はそれだけでは受講率が上がらず、上司から受講を促すといった方策がとられているところが多いようです。
2.ITスキル・IT環境のない受講者に受講させることが難しい
ある程度の速度のネット環境と、PC、そしてそれを使える技術がなければ、eラーニングをそもそも受けてもらえません。
このページを見ている方は全く問題ないのですが、「会社全員、グループ会社・販売代理店も含めて学習してもらいたい」といった中には
- 比較的高齢でパソコンを使ったことが無い
- パソコンはあるが回線速度が遅く、動画や資料をやりとりできない
- そもそもパソコンが無い
といった方もいらっしゃいます。このような方たちにeラーニング教材を提供するには、集合研修などによる利用法の説明など、大きなハードルを乗り越えなければなりません。
eラーニングのデメリットも考えた上で、集合研修と組み合わせるなどの工夫ができるのではないかと思います。
次は、eラーニングの国際標準規格についてです。